副鼻腔炎(蓄膿症)の治療ってどんなもの?
手術とかはやっぱり怖い…
副鼻腔炎の治療方法は、保存的治療と手術的治療の2つに分けられます。
最近では、最短日帰りで受けられるような負担の少ない手術もでてきました。
医師と相談した際に最良の選択をするためにも、治療の選択肢を知っておきましょう。
副鼻腔炎の診断方法や、治療方法、どんな場合に手術が必要になるのか、について見ていきましょう。
また、自力でできるケアについても合わせて紹介しています。
※急性及び慢性副鼻腔炎(蓄膿症)が対象の記事です。好酸球性副鼻腔炎などの特殊な副鼻腔炎は専門治療を要するので、必ず耳鼻咽喉科で受診しましょう。
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図解!副鼻腔炎(蓄膿症)のメカニズム!
頭部には、副鼻腔と呼ばれる空気で満たされた空洞があります。
この空洞は左右対称に4か所、計8か所あり、いずれも自然口といわれる管で鼻道(鼻腔)とつながっています。
副鼻腔炎とは、この副鼻腔のどこかで炎症が起きている病態をさします。
副鼻腔に炎症が起こり、周囲の粘膜が腫れると、自然口はふさがってしまいます。
その状態が続けば、副鼻腔内の空気の換気不全、分泌物の排泄不全につながります。
これが、副鼻腔炎の各種症状となって現れる、というメカニズムなのです。
特に、図の左側のように副鼻腔に黄色く膿がたまった状態を、俗に蓄膿症といいます。
副鼻腔炎(蓄膿症)の原因
副鼻腔炎は、風邪などのウイルス感染のあとに続く細菌感染が主な原因です。
他にも、鼻の構造的要因(鼻腔が狭くつまりやすいなど)や生活環境要因も副鼻腔炎の原因になり得ます。
近年、細菌感染以外にもアレルギー性鼻炎の症状が進行して副鼻腔炎になるアレルギー性副鼻腔炎が増えており、単一というより複合的な要因で起きている場合が多いといえます。
原因について詳しくはコチラ
※ニオイや頭痛はなぜ?副鼻腔炎(蓄膿症)の3大原因と対処法!
副鼻腔炎(蓄膿症)の症状は?
風邪などのウイルス感染のあとに続く細菌感染などにより、副鼻腔のどこかで炎症が起こることで副鼻腔炎の症状が現れます。
そして、初期の副鼻腔炎では次のような呼吸器症状がみられます。
- 鼻閉(鼻づまり)
- 鼻漏(鼻水)
- 後鼻漏(鼻水がのどの方へ流れ落ちる)
- 咳嗽(せき)
- 痰
また、先ほどの図をよく見てみると、それぞれの副鼻腔は顔表面の頰・目の間・額の奥に位置しているのがわかります。
それゆえ、炎症がひどくなると、頭痛、眼の痛み、頰の痛みも伴うことがあります。
一般に副鼻腔の炎症を伴わないアレルギー性鼻炎や風邪では目や頰の痛みは生じません。
また、副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎や風邪では、鼻水の状態に違いが見られることが多いです。
副鼻腔炎と見分けるポイントについて
※アレルギー性鼻炎・風邪と副鼻腔炎を見分けるポイントは鼻水!
耳鼻咽喉科での副鼻腔炎(蓄膿症)の診断
副鼻腔炎の症状(鼻づまりや咳など)は、その他の疾患でも当てはまるケースは多いので、自分で判別するのは難しいでしょう。
そして、副鼻腔炎は症状が悪化すると治りにくくなるので、症状が長続きしているようであれば、耳鼻咽喉科で受診することをおすすめします。
耳鼻咽喉科では、基本的に問診、内視鏡を用いた視診、そしてレントゲン(場合によりCT、MRI)を用いた画像診断による総合的な診断が行われます。
問診次第で、隠れた重大な問題に気づくことができるかもしれません。
問診時には、自分の持病や過去の病歴をきちんと伝えられるようにしておきましょう。
視診では、内視鏡等の医療器具を使うことで副鼻腔を覗き見ることができるので、より確かな診断ができます。
ここまでの診察で、だいたいは副鼻腔炎の鑑別が可能となります。
この他、さらに細菌検査を行うこと施設もあります。
最終的に副鼻腔炎と診断された場合、自分にあったベストな治療法を検討・決定することになります。
副鼻腔炎(蓄膿症)の治療法-保存的治療-
副鼻腔炎は、問診、視診、画像診断などによる総合的な診断により、治療方針を決定していきます。
そして、副鼻腔炎の治療方針は大きく分けて次の2つです。
- 保存的治療
- 手術的治療
まずは、保存的治療について解説します。
保存的治療とは、外科的手術以外の治療法全般のことです。
急性副鼻腔炎であれば自然治癒することが多いので、保存的治療や、場合によっては経過観察となります。
慢性副鼻腔炎についても、まずは保存的治療の検討からはいることが多いです。
副鼻腔炎に対する保存的治療法は以下の2つに分けられます。
- 鼻掃除(鼻処置、鼻汁吸引、鼻洗浄)
- 薬の処方(ネブライザー療法、内服)
それぞれについて見ていきましょう。
※病院によって、治療方針に違いはあります。
①鼻掃除
局所麻酔薬と血管収縮剤を鼻腔の粘膜に塗布し、粘膜の腫れをやわらげると同時に吸引管により鼻汁を吸引します。
吸引後も鼻汁残っている場合は、生理食塩水(約0.9%の食塩水)を使った鼻洗浄なども行います。
洗浄の一種である鼻うがいについては、後述の自力でできるケアでも取り上げています。
②薬の処方
薬にもいろいろな服用の仕方があり、耳鼻咽喉科では経口薬(口から飲む薬)と経鼻薬(鼻腔内に投与する薬)が処方されます。
特に経鼻薬による治療は、副鼻腔粘膜に霧状にした薬を直接送り込むための噴射機器を用いるため、ネブライザー療法と呼ばれます。
ネブライザー療法で処方される薬には、抗菌薬、ステロイド、血管収縮薬などがあります。
飲み薬の場合も、上記と同じような薬のほか、気道粘液修復薬なども処方されます。
薬物治療について詳しくはコチラ
※病院での副鼻腔炎(蓄膿症)の薬物治療
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副鼻腔炎(蓄膿症)の治療法-手術的治療-
鼻処置や薬の処方による保存的治療でよくならない、あるいは再発を繰り返すような慢性副鼻腔炎の場合は、手術が選択肢に入ります。
※髄膜炎や脳腫瘍などの合併症がある方の急性副鼻腔炎は緊急手術を要します。
一般的な手術の流れは以下のようになります。
- 術前管理(検査や麻酔)
- 術中
- 術後管理(止血や痛み止めの処方)
- 退院後、通院による経過観察
手術によるリスク、手術の種類、費用や期間について解説します。
手術のリスクは?保存的治療との比較!
もしも手術が治療の選択肢となった場合、いろいろと気になることが多いかと思います。
手術を頻繁に受ける方は少なく、ネット上でもいろいろな質問が出ています。
そこで、保存的治療と手術的治療を比較して、一般的な手術のリスクやベネフィットを見ていきましょう。
手術的治療 | 比較項目 | 保存的治療 |
---|---|---|
高い | 1回の費用 | 安い |
大 (入院日数) |
時間的拘束 | 小 (通院・受診時間) |
高い (根治療法) |
効果 | 治療による (対症療法) |
術後の後遺症のリスク | 有効性以外の懸念 | 薬物治療であれば薬の副作用 |
費用面では1回の費用は手術の方が高くなりますが、通院する回数が多ければ多いほど保存的療法でも費用はかかってきます。
安全面では内視鏡のおかげで、より後遺症のリスクの低い安全な手術も可能になってきましたが、鼻出血や顔のしびれといった症状がでることが報告されています。
一方の保存的治療でも、薬物療法の場合には薬の副作用がおこることはあり得ます。
副鼻腔炎(蓄膿症)の手術の種類
続いて、副鼻腔炎の保険適応が認められている手術として、以下の2つを解説します。
- 内視鏡下副鼻腔手術(別名:ESS)
- 内視鏡下鼻内整復術
①内視鏡下副鼻腔手術(ESS)
鼻の穴から内視鏡とマイクロデブリッターという手術器具を挿入し、鼻の中をモニタリングしながら行う手術です。
自然口(副鼻腔と鼻道をつなぐ管)を広げ、粘膜の病変部位を切除します。
副鼻腔炎の手術としては、現在最も一般的な手術です。
病院によっては、日帰りでの施術も可能なところがあります。
術後の出血のリスクが心配な方は、安全を考慮し1日は入院して様子を見る方がよいでしょう。
②内視鏡下鼻内整復術
鼻の内部構造(鼻から副鼻腔にかけて)が副鼻腔炎になりやすい構造である場合に、鼻構造を矯正する手術です。
鼻中隔が湾曲している場合や、下甲介骨の形がいびつな場合に該当します。
いずれも鼻内で行うため、顔に傷がついたり鼻の形が変わってしまうことはありません。
手術の費用や期間について
手術となると、やはり気になるのが費用や入院日数ではないでしょうか。
厚生労働省から認可を受けている手術の手技料は、診療報酬点数というルールで金額が一律定められています。
そのため、病院によらず費用の概算はある程度知ることができます。
施術料だけなら10万円以下となり、保険適応なので自己負担額は3割(2017年度時点の成人)になります。
詳細な手術内容と費用に関しては、下記のリンクが参考になるでしょう。
※手術費用について|医療法人かくいわ会 岩野耳鼻咽喉科サージセンター
期間に関しては病院のポリシーや患者さんの容態で変動しますが、最短日帰りから長くて1週間程度であることがほとんどです。
自分でできる!鼻のケアと副鼻腔炎(蓄膿症)の予防対策!
副鼻腔炎は病院で治療を受ける以外に方法はないのでしょうか?
いいえ、実は自宅でもできることがあります。
最後に、副鼻腔炎になってしまった場合にできる自宅ケアと、繰り返さないための予防対策をご紹介します。
※慢性副鼻腔炎の場合は病院で受診することをおすすめします。
自宅でできる副鼻腔炎のケア
自宅でできるケアとして、次の3つを解説します。
- 鼻うがい
- 温タオル
- 症状に適した市販薬
①鼻うがいは生理食塩水を使用する
鼻うがいは鼻洗浄の一種で、鼻から水を入れて口から出す洗浄方法です。
鼻腔を清潔に保つことで、細菌感染への抵抗力を高くする効果があります。
鼻うがいには水道水ではなく生理食塩水(約0.9%の食塩水)を使うようにしましょう。
ヒトの体液は塩分を含んでいるので、水道水のような真水を使用すると、浸透圧の力で鼻粘膜を痛めてしまいます。
鼻うがいのやり方や注意点に関しては、以下のリンクを参考にしてください。
※鼻うがい(鼻洗浄)で鼻の中をすっきり!やり方・注意点を解説|川村耳鼻咽喉科クリニック公式ブログ
②温タオルで鼻水を排出しやすくする
温めたタオルを鼻に当てがうことで、血行がよくなり、鼻水の排出促進につながります。
ただし、注意点として頰もしくは顔の痛みがひどい場合は逆効果になるのでやめましょう。
③市販薬は自分の症状にあったものを選ぶ
副鼻腔炎の原因そのものを取り除けるわけではありませんが、市販薬は辛い症状を和らげることで自然治癒をサポートします。
そのため、以下のように自分が困っている症状別に市販薬を選ぶことが大切です。
- 鼻づまりには、辛夷清肺湯や葛根湯加川芎辛夷といった漢方
- 後鼻漏や痰には、L-カルボシステインやブロムへキシンが含まれる薬
- 発熱や顔の痛みには、解熱鎮痛剤
症状別おすすめの市販薬はこちら
※症状別!副鼻腔炎(蓄膿症)におすすめの市販薬5選と薬物治療!
これらのケアを試しても症状が治まらない場合は、耳鼻咽喉科で診断してもらいましょう。
副鼻腔炎(蓄膿症)の予防対策!
生活で以下の2つに留意することは、副鼻腔炎の予防としても効果的です。
- 鼻のかみ方に気をつける
- 鼻毛を切りすぎない
①鼻をかむときは力まず・片方ずつ
副鼻腔炎に限らず、誰でも鼻をかみます。
実は鼻のかみ方にも正しい方法、コツがあります。
以下の3つを心がけましょう。
- かむ前に口から息を吸って空気を取り込む
- 片方ずつ、小刻みにかむ
- 力まずにゆっくりとかむ
肌に優しいやわらかいティッシュペーパーを使うというのもおすすめです。
②鼻毛を切りすぎない
見た目として鼻毛が出ているのはカッコ悪いと、お手入れをしている方も多いでしょう。
しかし、鼻毛は細菌の侵入を防ぐ大事な役割を担っています。
鼻毛の切りすぎには注意しましょう。
まとめ
副鼻腔炎(蓄膿症)の治療には、以下の2つがあります。
- 保存的治療
- 手術的治療
手術が必要になったとしても、医療技術の発達により最短日帰りでできる手術など、私たちにとって負担の少ない手術もでてきています。
保存的治療と手術的治療、それぞれにリスクとベネフィットがあります。
忙しいから、1回の手術ですませたい…
1回の治療費を考えれば、保存治療を続けたい…
などなど…
自分の症状の程度や生活状況も考慮して、医師と相談しながらベストな治療方法を選んでいきましょう。
日常生活で自分でできるケアや予防対策も忘れずに!
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副鼻腔炎診療の手引き|日本鼻科学会編 金原出版
今日の耳鼻咽喉科頭頸部外科治療指針 第3版|医学書院
耳鼻咽喉科疾患ビジュアルブック|学研メディカル秀潤社